ライブコマースとは?中国で市場規模拡大中の注目のマーケティング手法

ライブコマースとは、SNSや専門のプラットフォームでライブ配信をし、視聴者とコミュニケーションしながら商品購買を促すオンライン販売形式のことです。

「ライブ配信で物を買う」新しい形式が中国を中心に広がってきており、直近では日本でもライブコマースの事例も少なくありません。

この記事では話題のライブコマースについて、利用のメリットや事例を紹介していきます。
ライブコマースでの販売を検討している方はぜひ最後までご覧ください。

ライブコマースとは?メリットや仕組みを紹介 

ライブコマースとは、SNSや専門のプラットフォームでライブ配信をし、視聴者とコミュニケーションしながら商品購買を促すオンライン販売形式のことです。 

ECシステムがライブ配信プラットフォームに組み込まれているため、動画を見ながら購入手続きを完了させることができます。

ライブ配信は企業・商品担当者はもちろん、インフルエンサーに依頼して配信をしてもらうケースもあります。

ライブコマースのメリット

ライブコマースには、下記のようなメリットがあります。

  • 動画で配信するため商品の魅力を詳細に伝えられる
  • リアルタイムかつインタラクティブにコミュニケーションが取れる
  • 顧客の生の声を収集できる

ライブコマースの一番のメリットは、配信者と視聴者がリアルタイムでコミュニケーションできる点。

視聴者から質問を送ってすぐに回答がもらえるため、商品画像とテキスト(一部動画)のみの従来型のECショップでは伝わらなかった商品の魅力を伝えることができます。

マクロミルと翔泳社がとった「ライブコマースのいいと思う点」のアンケ―ト結果では、「画像やテキストではわかりにくい、商品の様子を動画で確認できる」「買い物をするとき、不明点や疑問点を確認できる」の2つの割合が多くなっています。

またリアルタイムで質問を受け付けることは視聴者(購入者)だけでなく、販売者にとっても有益です。
これまで口コミやアンケートを収集しないとわからなかった顧客の生の声が集まるため、サービス改善にすぐにつなげることができるのです。

ライブコマースは中国で市場規模を急拡大中

出典:https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/2021/3249f9cbffcf017f.html

中国国内のライブコマース市場規模は、2018年頃から急拡大し、2020年以降も市場が拡大していく予想が立てられています。 

2016年にアリババ傘下の淘宝(タオバオ)が「淘宝直播(タオバオライブ)」を、同じく2016年にEC大手の京東(JD.com)もサービスを開始するなど、大手EC企業がライブコマースに参入したことで、一気に拡大しました。
タオバオは2018年にライブコマースで1.5兆円もの流通を生み出し、2019年にはその2倍の約3兆円の売上を上げています。

大手企業の成長を皮切りに、ECサイトや動画プラットフォームがライブコマース市場に参入し、市場規模も急拡大していきました。

三菱UFJリサーチ&コンサルティングの調査によると、2020年3月の中国人ライブコマース利用者は2億6,500人とインターネット利用者の約30%を占めており、店舗・ECに続く第三の小売りチャネルとして大きな存在感を示しています。

また「月1回以上ライブコマースを利用している人」の割合は55.2%と、利用者割合だけでなく利用頻度も高く、ライブコマースによって商品購入が活発にされていることが分かります。

中国ではKOL(Key Opinion Leader)と呼ばれるインフルエンサーが多数存在し、1~2時間のライブ配信で億の売上を出す事例もあります。頻度・金額から見ても、ライブコマース市場がとても大きいといえるでしょう。

日本でもライブコマースはこれから市場規模が大きくなる見込み

日本国内も中国ほどではありませんが、2017年ごろから徐々に認知度を高めてきており、MMDの調査によると、ライブコマースの日本人認知率は約43.7%でした。

「視聴して商品購入をしたことがある」割合は5.8%と、先ほどご紹介した中国と比べるとまだまだ少ないようです。

https://mmdlabo.jp/investigation/detail_1960.html

中国と日本の違いは、ライブ配信専用のプラットフォームがないこと、EC化率が低いことの2つです。

まず中国では 淘宝直播(タオバオライブ)など大手ECサイトがライブコマースサービスを提供しているため、ライブコマースを視聴してそのまま商品購入に進めます。
一方で日本では主要ECサイトのAmazonや楽天にライブ配信機能が付いておらず、メインのライブ配信プラットフォームはインスタグラムやYoutubeのため、商品購入をするには別URLに遷移をしなければなりません。

また日本はそもそもEC化率が世界に比べて低いため、ライブコマースの市場規模も拡大しにくいという構造になっています。
経済産業省の電子商取引に関する市場調査(令和2年度)によると、世界のEC化率が18%であるのに対して、日本のEC化率は8.08%と低い水準となっています。そのためECと動画配信を組み合わせたライブコマースも広がりにくいのです。

しかし、2020年のコロナの影響もあってか、直近の国内EC化率も徐々に伸び始めています。これを機にライブコマース市場も拡大をする可能性があり、各企業の注目も集まってきています。

日本のライブコマースの成功事例

日本国内でライブコマースを活用している企業を紹介します。

  • 三越伊勢丹ホールディングス 
  • ユニクロ
  • SHIPS
  • ビックカメラ

三越伊勢丹ホールディングス|オリジナル商品をライブコマースで紹介 

三越伊勢丹ホールディングスは「お中元オンラインストア」のライブコマースを実施しました。お中元のECサイトがオープンしたこと、コロナウイルスによって店舗が臨時休業していることがきっかけで開催をしたようです。 

三越・伊勢丹のバイヤーがツイッターで人気のイラストレーターと掛け合いをしながらおすすめ商品を紹介。
「日本各地の素材・製法・人にこだわりぬいた三越・伊勢丹の限定品」をテーマに、「長崎県島原原産エキストラバージンセサミオイルセット」「山形県産もものサマーカップでザート」など10商品の魅力を伝えました。

ライブ配信画面の右上に「今すぐ購入」のボタンを設置し、紹介した商品を直接購入できるようにし、コメント書き込みによる相互コミュニケーションができる設計・仕組みを作りました。

 ライブコマースは約2,000人が視聴し、単月売上は前年比の2倍に増加させることができました。

ユニクロ|有名人、著名人を起用した宣伝 

ユニクロは「UNIQLO LIVE STATION」という名称でライブコマースを実施しており、多くの著名なインフルエンサーを起用して商品をPRしています。

最初のライブコマースはスタイリストとファッションモデルを招き、視聴者とのリアルタイムの会話をしながら商品紹介をするライブコマースを実施。  2022年9月時点で50回目を記録しています。

UNIQLO LIVE STATIONはユニクロのオンラインストアとアプリから視聴が可能で、三越同様に気になった商品はその場で直接購入ができます。 

SHIPS|SHIPは自社アイテムを2週間に一回のペースで配信 

SHIPSは2020年5月から同年1月にリリースした「シップスエニィ」のブランドライブコマースをスタートさせました。
小規模ブランドで顧客の反応を確かめながら数か月後には実施ブランドを拡大し現在は1~2週間に1回のペースで動画を配信。

メール会員への配信告知なども行い、アーカイブを設けることで、これまでの販売の経緯を再度自由に確認することができるようになっています。 

動画1本1時間で1カ月の売上が100万以上に達することもあるようで、営業推進本部長の大塚氏も「商品の魅力が伝わりやすく、販売効果が高い」というコメントを残しています。

ビックカメラ|オンラインでの接客に力を入れる 

ビックカメラのような大手の量販店もすでにライブコマースを導入していて、自社の製品やサービスの販売を行っています。オンラインでの接客に徹底してサービスを拡大することで全体的な売増しを狙っています。 

接客力を活かし「SHOWROOM」との提携も果たし、本格的にオンラインでの販売に力を入れていきます。 

顧客との距離感なく、おすすめの商品や新作の商品を実演して使用して見せる事で、使用の仕方や、利用上の注意なども伝えることができ商品を販売しやすなりました。 

ライブコマースの始め方と失敗しないためのポイント

ライブコマーズを始める際は以下のステップを踏みます。

  • 販売する商品を決める
  • ライブコマースを実施するプラットフォームを選択する
  • 配信内容と配信者を決める
  • スタジオ・機材を準備する
  • ライブコマースの告知をする
  • 配信する
  • 配信データを分析する

それぞれ詳しく見ていきましょう。 

1.販売する商品を決める

まずは、売り出す商品を決めましょう。

ライブコマースのメリットは動画で商品説明をすることで、写真では表現しづらい商品の魅力を伝えられること。

サイズ感、色味や質感などがわかりづらい「衣料品(アパレル)・日用品・グルメ(食品)・化粧品(コスメ)」などの商品がライブコマースには向いています。

また、ライブコマースの視聴者は10〜30代が多いため、若者向けの商品がおすすめです。

2.ライブコマースを実施するプラットフォームを選択する

次にライブコマースを実施するプラットフォームを選択しましょう。

現在日本で活用できるプラットフォームの一覧をご紹介します。

Youtube Live

Youtubeは利用者数が多く、視聴者数を集めやすいことが特徴です。
インスタグラムの月間アクティブユーザーが3,300万なのに対して、Youtubeの月間アクティブユーザーは6,500万人と2倍近く。

一方で商品を購入する際は外部のECサイトに遷移させなければならないため、離脱が起こってしまう点がデメリットです。ライブ配信を見てもらうための告知から、商品購入までの導線設計がカギになるといえるでしょう。

Instagram ライブ

InstagramもYoutube同様「SNS型」のライブ配信サービスです。

インスタライブは無料で手軽に始められる点がメリットです。Youtubeライブではチャンネル登録者数が1,000人以上でないとできないという規制がありますが、インスタグラムではその制限はありません。

一方で配信時間に制限がついている点がデメリット。Youtube Liveに存在する投げ銭機能「スーパーチャット」もInstagramにはありません。

LINE(LIVEBUY)

LIVEBUYは2022年夏よりLINEが新たにスタートさせたライブコマースサービスです。 

友達登録をしている企業であれば、ライブ配信開始時に通知を届けられます。

またLinePayのアカウント登録をしていれば、ワンタッチ決済で商品購入をすることができ、YoutubeやInstagramのような途中離脱のリスクもありません。

HansUP 

「HandsUp」は、17LIVEのライブコマースシステムが提供するライブ配信サービスです。

一番の特徴は、商品登録からライブ配信、購入までをアプリ内で完結できること。

ただし月額費用として10,000円がかかるため、本格的にライブコマースを拡大させていく場合におすすめです。(テスト運用はYoutubeLiveなどのSNS型を利用するとよいでしょう。)

SHOWROOM  

SHOWROOMはアプリ型のライブ配信サービスです。

ライブ配信に特化したサービスのため、配信を盛り上げる機能が豊富という特徴があります。

一方で視聴者はアプリダウンロード者に限られるというデメリットもあります。自社が集客したいターゲット層とアプリダウンロード層がマッチしているかはよく確認しましょう。 

BASE ライブ 

BASE ライブはECサイト機能+動画ライブ配信機能が備わり、ライブコマースとしての機能が充実しているECサービスです。

商品の登録数も自由に行うことが可能で、リーチの分析機能も標準装備しています。 

3.配信内容と配信者を決める

商品と配信方法が決まったら、次は配信内容と配信者を決めます。

商品をただ紹介するだけでは、視聴率維持

出演者は自社スタッフかインフルエンサー(タレント)かのどちらかを選びます。それぞれの特徴を下記の表にまとめました。

出演者特徴
自社スタッフ・商品やブランドへの知識を持っているため、より魅力的に商品紹介ができる
・予算をそこまでかけずに済む
インフルエンサー
タレント
・フォロワーがライブ配信を見てくれるため、視聴者数が増える

それぞれで特徴が異なるため、一概にどちらのほうがいいとは言えず、ライブ配信の予算や目的によって適切な配信者は異なります。 自社の状況を踏まえて適切な配信者を決定しましょう。

4.スタジオ・機材を準備する

配信には必ずしもスタジオを用意しなければならないわけではありません。下記の選択肢の中から最適なものを選びましょう。

配信場所特徴
店舗・ブランドイメージが伝わりやすい
・開店前後のクローズのタイミングでのみ撮影可能
オフィス・時間を選ばず、手軽に撮影できる
・内装によっては雰囲気が作りにくい(間違って伝わってしまう)
レンタルスタジオ・照明や機材があるため、雰囲気が作りやすい
・レンタルするのに予算がかかる

テスト段階であれば、店舗やオフィスを利用して低予算でライブコマースを実施するとよいでしょう。 

5.ライブコマースの告知をする

ライブコマースの効果を最大化するために、実施の1週間くらい前からライブ配信をする旨を告知しましょう。

SNSや自社ECサイトはもちろん、PRtimesなどのプレスでも告知ができます。また仮にインフルエンサーに依頼をする場合はインフルエンサーのSNSでも告知をしてもらえば、より拡散効果が高くなります。 

6.配信する

配信は台本にとらわれ過ぎず、視聴者とのコミュニケーションを大切にしながら進めることがポイントです。

生配信はアクシデントが起こりやすいため、リハーサルを実施しておくとリスクに事前対処ができるかもしれません。 

7.配信データを分析する

配信して終わりではなく、視聴者数やコメント数、サイト遷移数などの数値から分析をしましょう。 

配信後には、リーチした顧客の数をカウントしたり確認することができます。

サービスによって何を分析できるかが異なりますが、どこの地域からのアクセスが多いのか、またどの商品へのリーチが一番多いのかなど傾向をつかんで商品改善及び、次回のライブ配信につなげましょう。 

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