ステマ(ステルスマーケティング)は法改正により違法行為に!炎上事例も紹介

「最近よく聞くステルスマーケティングって何?」

「ステマは違法なの?具体事例を知りたい」

ステルスマーケティングとは、消費者に広告宣伝であることを隠しながら商品やサービスのセールスプロモーション活動を行うことです。

2023年10月から「ステマ」が違法行為とみなされるようになります。

この記事では、ステマについてさらに詳しい情報、炎上事例、防止方法をご紹介します。

ステマとは?ステルスマーケティングの意味をわかりやすく解説

ステルスマーケティングとは、消費者に広告宣伝であることを隠しながら、セールスプロモーション活動を行う手法のことです。

ステマは「有名人に依頼して紹介してもらう」と「口コミサイトに高評価レビューを投稿」するという2つの方法があります。

いずれも商品やサービスに「作られた」高評価をつけ、購買行動を促進しようとするため、モラルに反することから問題視されてきました。

ステマは実在しない口コミやレビューを投稿することで、消費者を欺くことになるため健全な購買活動を妨げたり、自社だけでなく広告業界や通販業界に悪いイメージを与えることになったりするため、ステマ行為は規制されてきているのです。

そこで法人起業や個人が集まり市場の健全化目指す*WOMJでは、ステマ行為に該当しないように明確なガイドラインを示し、日本の多くの企業がこのガイドラインのもと運用してきています。

*WOMマーケティング協議会

しかし現在もステマ行為が発覚する理由については、日本ではステマが法的に規制されていないことやSNSプロモーション活動が頻繁に行われるようになった背景から考えられます。

まず日本のステマの歴史を見ていきます。日本ではステマ(stealth-marketing)が2012年のペニーオークション事件(同記事で詳しく説明)以降に話題になりましたが、もともとは2003年に米国ですでに存在し、2009年12月には広告主が法的責任を負うという内容で違法化しています。

しかし日本では「インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法上の問題点及び留意事項」ガイドラインでステマを違法とせず警告のみとし、JIAAやWOMJなど広告業界がガイドラインを示すなど自主的に規制を定めています。

そのため解釈に幅があり、2012年以降も事件が多数発生したり、反対にステマではない行為・投稿が疑われるなど、人々の間でステマの定義が明確に認識されていないことで現在まで問題が発生しています。

またSNSによるプロモーション活動が消費者の購入動機に繋がるということから、芸能人やインフルエンサーが企業からの依頼で商品やサービスを紹介をする投稿が増えたことも理由の1つとして考えられます。

以下のグラフは男女別に「購買プロセスにおいてインフルエンサーに影響を受ける理由」の結果から、現在もマーケティング手法の1つとして頻繁に行われていることが分かります。

「使用間や使用例、口コミなどの情報を得ることができるから」や15-20代では「そのインフルエンサーが好き、信頼しているから」の割合が高く、消費者に強い購買行動を促しています。

引用先 購買行動に影響を受けるインフルエンサーからの情報源は、男性Youtube,女性はInstagram【ソーシャルコマース定点調査】

このように企業がインフルエンサーを起用したSNSでのプロモーションは消費者の購買行動に影響を与えるとし、現在でも主なマーケティング手法の1つとなりました。しかしステマに該当する行動をしてしまうことで企業、ブランド、インフルエンサーに炎上する事例が多数発生しています。

2023年から10月からステマは景表法で規制強化される

上記でも述べたように日本ではステマは法的に禁じられておらず、明確な定義がされていませんでした。

しかし、消費者庁は「ステルスマーケティング」を景品表示法の不当表示として禁止行為に指定し、2023年10月から施行されることが決定しました。

「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」が不当表示に当たるとし、上記で説明したように企業が商業的な意図があるのにも関わらず、それを消費者に明示せずに表示する行為がステマにあたります。
ステマが発覚した場合、今回の規制の対象者は広告主側の企業のみでインフルエンサーなどは対象外となります。また10月以前(9月30日以前に投稿されたもの)に世に出た内容も規制対象となります。

広告主側は消費者庁が再発防止を求める措置命令を出し、従わなかった場合は2年以下の懲役、300万円以下の罰金または併科とされます。

規制強化に伴い、「WOMJガイドライン」は新たなステマ規制に対応するためのガイドラインを定めています。

2023.6.21公開 WOMJガイドライン本文と解説 

ステマ(ステルスマーケティング)の炎上事例を紹介

ステマでの炎上事例を8つ紹介します。

  • アナと雪の女王2
  • 食べログの口コミ評価とランキング
  • ペニーオークション事件
  • 吉本興行
  • フジテレビアナウンサー
  • ソニーエンターテイメント
  • 岩手放送のステマ騒動
  • タレントがオーナーであることを隠し自社商品を宣伝

ステマ事例1 アナと雪の女王2

▼事件内容

2019年12月頃、複数の漫画家がTwitterでディズニー映画「アナと雪の女王2」の感想を描いた漫画を公開。

ツイート内にはPR表記はないものの、映画の内容を好意的に紹介しており、レビューの投稿時間が午後7時に集中していたため、ステマ疑惑が浮上しました。

漫画投稿を公開したインフルエンサーからは翌日午前、指摘を受けた漫画がPRであったことをするツイートが投稿されました。発覚後、12月5日にウォルト・ディズニー・ジャパンは公式に謝罪文を公表しています。

▼事件後の対応と影響

この謝罪のあとに、「アラジン」「アベンジャーズ/エンドゲーム」「キャプテン・マーベル」などの他のディズニー作品においてもステマ疑惑となる投稿があげられていたことが発覚し、12月11日に同社は再度、公式サイトにて再度謝罪文を述べています。

ただその後も、「アナと雪の女王」と検索すると「ステマ」と検索結果に出てきてしまっています。世界的に有名な映画作品にマイナスな表現がつけられてしまうことで、大きな代償を負うことになってしまうため、ステマ再発防止の対策をしていく必要があります。

▼参考記事やニュース

 ステマ事例2 食べログの口コミ評価とランキング

▼事件内容

2012年、サイトに掲載されている飲食店が代行業者にお金を払い、自店舗のページに好意的な口コミを投稿するよう依頼をして問題となりました。

食べログの運営会社である価格コムが直接関与したわけではありませんが、食べログの口コミ評価はユーザーにとって重要な意思決定指標であったため、話題となりました。

また、2016年にはサイト内のランキング順位の一部が広告枠となっており、金額に基づき順位づけされていることも発覚しました。

▼事件後の対応

発覚後は広告コンテンツは広告枠であることが分かるように表記すると言うルールが追加されて運用されています。

▼参考記事やニュース

ステマ事例3 ペニーオークション事件

▼事件内容

2012年に運営業者が出品する高額商品を低価格で落札できるとアピールするインターネットオークションサイト、「ペニーオークション(ペニオク)」が参加者から入札手数料をだまし取っていたことが発覚しました。

またこの事件は、複数の芸能人がペニオクから報酬を受け取ることと引き換えに、ブログで広告表示をせずに「商品を安く購入できる」と紹介したことをきっかけにステマが話題になりました。

▼事件後の対応

2011年1月から、国民生活センターは「高額な手数料がかかってしまった」「入札タイミングが同じユーザーがいるなどサクラの可能性が疑われる」などという報告を受けました。

それにより、景品表示法に基づく措置命令(実際より著しく優良なサービスで、取引条件についても有利と誤認させる表示の改善と徹底など)を下しました。

▼事件後の影響

事件発覚後、商品を紹介した複数の芸能人に大きな影響が出ています。

億単位の違約金の発生、個人SNSの削除、出演番組数の減少、芸能活動の自粛などの影響がありました。芸能活動を自粛してしまっている芸能人もいる一方、芸能活動を継続できたとしても「ステマ」という悪いイメージは消されずに芸能活動することになってしまいます。

▼参考記事やニュース

ステマ事例4 吉本興行

▼事件内容

2019年10月、吉本興行のお笑いコンビ「ミキ」が京都市から計100万円の報酬を受けているのにも関わらず、投稿に宣伝であることを表示せずに観光地を紹介する投稿をしていたことが発覚しました。

京都市は京都にゆかりがある芸能人として「ミキ」に依頼し、投稿には「京都最高ーみんなで京都を盛り上げましょう!!京都を愛する人なら誰でも、京都市を応援できるんです!詳しくはここから!」「#京都市盛り上げたい」「#京都国際映画祭2018」「#京都市ふるさと納税」とPR表記なしに投稿し、100件程度のRT数を獲得したことで、多くの批判コメントがつきました。

▼事件後の対応

騒動後も京都市と吉本興行はステマであることを認めていません。観光業界が芸能人に報酬を与えてPR活動を依頼する際は、広告主とインフルエンサーはステマ行為の発生防止をするように活動する必要があります。

▼参考記事やニュース

ステマ事例5 フジテレビアナウンサー

▼事件内容

2021年にフジテレビ女子アナウンサーが芸能人御用達の人気美容室や系列店でネイルやマツエクなどのサービスを無料で受け、その代わりに同店を写した写真をSNSに投稿することで宣伝したとして、ステマ行為であると報道されました。

計8名のフジテレビアナウンサーが関係し、2019年11月から1年半の間に5回ステマに該当する投稿をしているアナウンサーも確認。

▼事件後の対応と影響

その後のアナウンサーの活動にどんな影響があったかは公開されていませんが、「社員就業規則に接触する行為が認められた」と発表しました。

このような投稿が行われると、ステマではない投稿までも疑われてしまい、広告や美容業界への悪影響が生じてしまいます。

▼参考記事やニュース

ステマ事例6 ソニーエンターテイメント

▼事件内容

2001年、米ソニー・ピクチャーズエンタテインメントが自社映画の宣伝として映画評を捏造したことが報道されました。コネティカット州の週刊誌リッジフィールド・プレスに”デビット・マニング”という映画評論家を推薦するコメントを掲載。

のちに、”デビット・マニング”という評論家は実在せず、同社内での自作自演であったことが発覚したほか、宣伝活動に対する監視強化を約束していたことが明らかになりました。

▼事件後の対応

経営幹部2人を一時的に定職処分にし、宣伝活動の更なる監視強化を徹底することになりました。

さらに推薦コメントによって被害を被ったと主張する観客に5ドルの返金をし、合計150万ドル(約1億6000万円)の賠償金を支払いました。

▼参考記事やニュース

ステマ事例7 岩手放送のステマ騒動

▼事件内容

2015年9月に放送された岩手放送の旅番組の中で、大手商品メーカーの「明治」からタイアップ料金をもらって乳酸菌ヨーグルト「R-1」を宣伝したのにも関わらず、提供表示がなく放送されたことでステマ騒動が疑われました。しかし岩手放送がステマだと認めていないことが問題となっています。

▼事件後の対応と影響

騒動後に鎌田英樹社長を始め、テレビ制作部長などが出席する番組審議会が行われ、審議会の議事録を週刊新潮が入手したことで騒動が明らかになりました。

審議議会中に「スポンサーからタイアップ料金をもらうが、スポンサーの提供表示はしない番組だった」とステマを認める発言が幹部からあったのにも関わらず、12月にはウェブサイトで「番組審議会において番組の制作に関する社員の事実誤認による発言が議事録にそのまま掲載されておりました」とステマ騒動を否定する文章を発表しました。

放送局にとってステマは放送法に違反することになるため大問題でありながら、一度ステマだと認める発言があったのにも関わらず、「ステマ」を否定する文章が発表されたことで、視聴者からの信頼をさらに失い、審議委員からは「あざとい」「視聴者をバカにしている」と批判を受けています。

ステマ事例8 タレントがオーナーであることを隠し自身のお店を番組で絶賛した事例

▼事件内容

2017年にタレントのグッチ裕三が浅草のメンチカツ屋オーナーであることを伏せ、自身がお店と関係があることを明らかにせずに、様々な番組で「浅草メンチ」を宣伝していたことが問題になりました。

▼事件後の対応とその影響

本人は「基本的に名前を出さずに勝負したかった。そうしたら思いの外うまくいって。私の認識不足でした。」と謝罪をしています。

しかし観光客に人気のある「浅草メンチ」に「ステマ」という悪いイメージがついてしまったことに加え、周辺店舗へ大きな影響がありました。宣伝効果により食べ歩きで汚れた手で他店の商品を触わる人が増え、商品にならなくなってしまうというという声があったことから、路上禁止という規制が出るなど、お店や観光客にも悪影響をもたらしています。

ステマを避けるための6つの方法

ここからはステマを避けるための6つの方法をご紹介します。

  • 広告主について明記
  • 関係性を明記
  • 金銭のありとなしで明記の仕方に気をつける
  • 偽装行為をしない
  • ブランドコンテンツ広告を活用する
  • 嘘や誇張した表現はしない

広告主について明記

商品やサービスを誰から依頼されているのかを明確に記載することが大切です。

広告主である企業名・ブランド名を分かりやすく文面で明示することで、広告主と関係性があることを消費者に伝えることが可能です。

以下では、明記の仕方について詳しくご紹介します。

関係性を明記する

インフルエンサーが企業から商品やサービスの紹介を依頼された場合、企業・ブランドとインフルエンサーの関係性を明記する必要があります。

投稿欄に消費者に正しく分かりやすく明記することでステマを防止することができます。

口コミをコミュニケーション手段として利用するマーケティング手法が流行したことで、健全な口コミマーケティングを運用することを目的にWOMマーケティング協会(WOMJ)が発足しました。そこでWOMJは関係性の明記方法について、以下のような「便益タグ」を明示することを認めています。

便益タグの利用は金銭だけでなく、物品・サービスの提供がある場合でも使用を認めています。

便益の内容
金銭あり 物品・サービスなどのみ

#Promotion, #プロモーション

#Sponsored, #スポンサード

#Supported, #サポーテッド

#Ambassador, #アンバサダー

#協賛

#提供

#タイアップ

#PR

※「#PR」は、パブリックリレーションズと混同のおそれがあるため使用は推奨しませんが、現状のWOMマーケティングの実態に鑑み、 暫定的に使用を許容します。
#物品提供#サービス提供#プレゼント企画#プレゼントキャンペーン#モニター#モニター・プレゼント#献本
不可

参考:WOMJより

(追記) 法改正に伴い、2023年6月21日にWOMJは新たなガイドを発表しています。
「関係内容の明示の方法」として、以下の関係タグのみ使用を認めています。

#プロモーション
#PR
#宣伝
#広告
また#AD、#pr、#宣伝、#広告などの英語表記・小文字表記は推奨されていません。

詳しい内容はWOMJガイドライン 2023年6月21日rereaseでご確認ください。

関係性を明記することに気をつけること

便益タグを使用する際に気をつけるべき点を3つご紹介します。

さらに詳しい内容は以下、WOMJのサイトをご確認ください。

                 WOMJガイドラインを見る

1.金銭・物品・サービスなどの提供が複数種類がある場合

基本的には全ての関係性を明記します。一部便益のみを明示する場合は、より重要と判断される便益を優先します。例えば金銭による報酬は物品・サービスのみの報酬よりも重要であるため、優先して明示される便益だと定義されています。

2.金銭ありとなしでは便益タグの表記方法が異なる

上記の便益タグでもご紹介した通り、金銭ありと物品・サービスなどのみでは表記方法が異なります。特に注意しなければいけない点として「金銭あり」のみの場合、以下のタグが使用できません。

#物品提供

#サービス提供

#プレゼント企画

#プレゼントキャンペーン

#モニター

#モニター・プレゼント

#献本

3.関係性を明示する時の位置

情報発信者から発せられる情報にできるだけ隣接させ、誤解なく判読できるように明示します。投稿の冒頭や「続きを読む」などの文章が省略される手前や、ハッシュタグであれば、ハッシュタグ群の先頭で明示すると消費者に分かりやすく伝えることが可能です。

偽装行為をしない

WOMJはガイドラインの1つに偽装行為の禁止を定めています。

参考:WOMJより

業界問わずSNSによるマーケティングが主流になったことで、なかなか効果を実感できず、不正行為を行ってしまうことがあります。

しかし上記に該当する偽装行為が発覚した場合、企業・ブランドやインフルエンサーのイメージダウンに繋がり、結果的にSNS運用が難しくなるため、適切な行動をしましょう。

ブランドコンテンツ広告を活用する

Instagramでのプロモーションをする場合、Instagram広告の一種「ブランドコンテンツ広告」の機能を使用することでステマを防止することができます。

投稿の表示形式は、紹介しているインフルエンサーの投稿に「広告」と表示されます。キャプション欄の冒頭に「(ブランド名)とのタイアップ投稿」と協業関係を自動で明記してくれます。

ステマを防止できることに加え、インフルエンサーのフォロワーの目にも止まるため、新規顧客の獲得ができるというメリットもあります。

企業・ブランドとインフルエンサーとのすり合わせを行う

企業・ブランドだけがステマについて理解しているだけでは、インフルエンサーが正しく便益タグを使用していないなどの理由により、ステマ行為に該当する場合があります。

一度誤った投稿をしてしまうと、インフルエンサーの投稿を削除するのに手間と時間がかかります。依頼する際は、投稿時の注意点などを丁寧に細かく文面で伝えたり、投稿前に下書きの確認などを行ったりすることで防ぐことができます。

まとめ

ステマの一般概念、事例、対策方法をご紹介しました。

今後SNSでのマーケティングを検討している方は、この記事に合わせWOMJのガイドラインを参考にすることをおすすめします。

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