ここ数年、インターネット上で活動するバーチャルYouTuber、通称「VTuber」が大きな盛り上がりを見せています。ゲーム実況や歌ってみた動画などを中心に、個性豊かなVTuberが日々新たなコンテンツを生み出し、多くのファンを獲得しています。
<VTuber市場規模推移>
年 | 市場規模(億円) | 前年比 |
2020年 | 123 | 101.6% |
2021年 | 251 | 103.3% |
2022年 | 370 | 147.4% |
2023年 | 800(見込み) | 153.8% |
引用:矢野経済研究所-VTuber市場に関する調査を実施(2023年)
上記表の通り、矢野経済研究所の調査によると、VTuber市場は急成長を遂げており、2023年には800億円規模に達するとされています。
このような背景から、企業がマーケティング活動の一環としてVTuberを活用する「Vtuber マーケティング」が急増しています。VTuberマーケティングは、従来の広告手法とは異なるアプローチで、消費者との新たな接点を創出し、共感を生み出すマーケティング手法として注目されています。
目次
VTuberマーケティングとは?
VTuberマーケティングとは、 VTuber を活用したマーケティング手法のことです。近年、企業のマーケティング活動において注目を集めています。
VTuberとは |
「Virtual YouTuber」の略称で、モーションキャプチャなどの技術を用いて2Dまたは3Dのアバターを介して活動するYouTuber を指します。 近年では、その活動範囲は動画配信にとどまらず、歌ってみたやゲーム実況、企業とのタイアップなどのマーケティング活動など多岐にわたります。 |
企業は、自社でVTuberを制作・運用したり、VTuber事務所に所属するVTuberにタイアップを依頼したりすることで、マーケティング活動に活用します。
商品のターゲットとVtuberのデモグラを組み合わせて、適切にターゲティングできるのが強みとなっており、VTuberの人気が高まっています。
VTuberの定義と種類
VTuberは、大きく2つの種類に分けられます。
種類 | 特徴 |
企業VTuber | 企業に所属し、企業のマーケティング活動の一環として活動するVTuber |
個人VTuber | 企業に所属せず、個人で活動するVTuber |
企業勢VTuberは、企業の広報活動や商品PRなどを目的として活動することが多く、企業の公式アカウントで配信を行う場合や、専用のキャラクターやチャンネルを持つ場合があります。
一方、個人勢VTuberは、趣味や自己表現を目的として活動することが多く、収益化している場合もあれば、そうでない場合もあります。
VTuberは、従来のYouTuberと比較して、以下のような特徴があります。
- 「ライブ配信中のコメントに対するレス」や「Twitterでリプライのやり取り」により視聴者との距離感が近く、親近感が湧きやすい
- アバターを使用することで、顔出しをすることなく、プライバシーを保護しながら活動できる
- キャラクター設定や世界観を自由に構築できるため、独自の世界観の確立がしやすく、エンゲージメント率が高いファンやユーザーの獲得ができる
- デザインの調整やオリジナルデザインを作成しやすいため、コラボ商品開発の実現ハードルが低くオリジナルPRがしやすい
これらの特徴から、近年では企業がマーケティング活動の一環としてVTuberを活用するケースが増加しています。
企業がVTuberマーケティングを行う目的
企業がVTuberマーケティングを行う目的は、大きく以下の3つが挙げられます。下記の目的に加え、従来のマーケティング手法ではリーチが難しくなってきている若年層を含め、より幅広い層に効果的にアプローチすることが可能なため、近年では各企業が積極的に取り入れています。
具体的には、下記のような目的が挙げられます。
目的 | 内容 |
ブランド認知度の向上 | VTuberを通じて、企業や商品・サービスの認知度をより効率的に高められる |
購買意欲の向上 | Vtuberのファンは熱量が高いため、PRを実施した際にも、応援・お祝いをされやすく、サービスや商品に対するリアクションが起きやすい |
新規顧客の獲得 | Vtuberは独自のファンコミュニティを確立しているため、今までリーチできなかった層にアプローチが可能 |
VTuberは、従来の広告やPRよりも、ユーザーから親近感を持って受け入れられる傾向があり、視聴者との距離が近いことから、企業は消費者とのより強固な関係性を築くことが期待できます。
VTuberマーケティングのメリット
VTuberマーケティングには、従来のマーケティング手法にはない様々なメリットがあります。主なメリットとして下記が挙げられます。
- 若年層〜40代の幅広い層にリーチが可能
- ファンコミュニティが形成されやすく、高いエンゲージメント率が見込める
- PR活動の費用対効果が高い
- 多様なコンテンツ展開が可能
- 新規顧客獲得が効率的に狙える
若年層〜40代の幅広い層にターゲティングが可能
Vtuberマーケティングでは、クリエイターの数や取り扱うジャンルも幅広いことが強みのため、商品のターゲットとVtuberのデモグラを組み合わせる事で適切なターゲティングが可能です。従来の広告よりもより訴求したい層に対して、より効果的なアプローチができます。
ファンコミュニティが形成されやすく、コミュニティ内での話題化やバズが生まれやすい
VTuberはキャラクターを通して視聴者とコミュニケーションを取ることができます。それにより、従来のマーケティング手法よりもユーザーとの親近感が生まれやすく、ファンコミュニティが形成されやすいという特徴があります。これにより、ファン同士のコミュニケーションも活発化し、話題の拡散やバズが生まれやすくなります。
PR活動の費用対効果が高い
VTuber(特にマイクロ規模)を活用したPR活動は、有名人を起用するよりも低コストで実施できる場合が多いです。また、起用するVTuber自身のファンベースを活用できることもあり、費用対効果の高いプロモーションが可能です。
一点注意したいのは、ミドル規模のVtuberの起用です。ミドル規模の場合は市場価値がかなり高いため、タレントとのタイアップより、費用が大きくなる可能性があります。この点には十分注意して、起用するタレントを決定するといいでしょう。
多様なコンテンツ展開が可能
VTuberは、ライブ配信、動画投稿、SNS運用など、多様なコンテンツ展開が可能です。マーケティングチャネルが限定されることなく、企業は自社の商品やサービスに合わせて、最適な方法でプロモーションすることができます。
新規顧客獲得が効率的に狙える
VTuberのファン層と導入検討している企業のターゲット層が合致する場合、より効率的に新規顧客を獲得できる可能性があります。
特にVtuberは「このクリエイターが紹介しているものに興味がある」というファンマーケティングになるため、既にその商品やサービスに興味がある層ではなく、新規顧客になり得るエンゲージメントが高い層へのアプローチが可能です。
このような側面でも費用対効果の高いマーケティング手法となっています。
これらのメリットを活かすことで、企業はVTuberマーケティングを通して、従来の手法よりも効果的なマーケティングを実施できると言えます。
VTuberマーケティングのデメリット
VTuberマーケティングにも、他のマーケティング手法同様にデメリットがあります。主なデメリットとして下記が挙げられます。
- 専門的な知識やノウハウが必要
- キャラクターのイメージ変動や炎上リスクがある
- ファンも含めたコミュニティでの話題化がメインになるので『マス向け』への広がりは見込みにくい
専門的な知識やノウハウが必要
他のマーケ手法同様に、Vtuberマーケティングを効果的に行うには専門的なスキルと知識が必要です。
実際にマーケティング活動をしていくにあたり、ライブ配信、動画編集及び投稿、SNS運用など、各種コンテンツの知識が欠かせません。より効果的に訴求できるプランを考え、それを運用する能力も必要です。
また、ファンやユーザーとの交流にも注意が必要です。従来のマーケティングよりも距離感が近い分、コメントに返事をしたり、ファンの気持ちを理解し、それをマーケティング戦略に反映していくことが求められます。
急成長している市場ということもあり、Vtuberマーケティングの専門知識を持つ人を確保することも大変です。加えて、市場の成長率がかなり早いため、日々それに伴い市場の状況やニーズも変化しているので、常に最新のトレンドを学び続ける必要があります。
キャラクターのイメージ変動や炎上リスクがある
Vtuberは仮想キャラクターではありますが、ファンとの強い結びつきがあるため、以下のようなリスクが存在します。
- 不適切な発言や行動によるイメージダウン
- ファンの期待とのギャップによる批判
- 技術的トラブルによる信頼性の低下
- 他のVtuberやコンテンツとの競合
これらのリスクに対応するには、慎重なキャラクター設定とコンテンツ管理、炎上へのリスクヘッジなどが重要です。従来のマーケティング手法に比べてより生物味が高い手法のため、細心の注意を払う必要があります。
ファンも含めたコミュニティでの話題化がメインになるので『マス向け』への広がりは見込みにくい
Vtuberマーケティングの特性上、以下の制限があります。
- コアなファン層を中心とした狭い市場
- 一般層への訴求力の限界
- 年齢や興味関心による視聴者の偏り
- プラットフォームの制約(主にYouTubeやTwitchなど)
上記の制限により、大規模な認知度向上や幅広い層へのリーチには課題があります。メリットでも上げていた通り、ターゲットを絞った戦略立案が重要となります。
以上のデメリットを十分に理解し、適切な対策を講じることで、Vtuberマーケティングの効果を最大化することができます。各企業や商品の特性に合わせて、メリットとデメリットを慎重に検討し、最適な戦略を選択することが成功への近道となるでしょう。
企業担当者向け!VTuberマーケティング戦略の流れ
VTuberマーケティングを成功させるためには、具体的な戦略を立て、実行することが重要です。闇雲にVTuberとタイアップするだけでは、期待する効果を得られない可能性が高まります。ここでは、企業担当者が押さえておくべきVTuberマーケティング戦略のポイントを流れに沿って紹介します。
戦略 | 内容 |
目標設定 | • KGI・KPIを設定し、達成度を測定可能な状態にする • 例:認知度向上、売上〜千万円の増加、ブランドイメージ向上など |
ターゲット選定 | • どのような顧客層にアプローチしたいかを明確化し、ペルソナを設定する • ペルソナに合致するVTuberを選定する |
企画・コンテンツ制作 | • ターゲット層に響く企画を立案する • 他のVTuberとの差別化を意識したコンテンツを制作する |
費用対効果の最大化 | • 定期的な効果測定を行い、改善策を検討・実施する • 費用対効果を意識し闇雲な施策を打たないようにする |
炎上対策とリスク管理 | • VTuberの炎上リスクを理解し、事前にリスクヘッジをする • 契約内容を明確化し、トラブル発生時の対応策を検討する |
これらの戦略及び流れを意識することで、VTuberマーケティングを成功に導く可能性を高めることができます。
VTuberマーケティングの成功事例
ここでは実際にVTuberマーケティングを活用した成功事例を紹介します。具体的な成功事例を通じて、取り組み内容の概要やその効果を見ていきましょう。
アンファー株式会社/スカルプD
弊社で実際にお取り組みをした、アンファー株式会社様のスカルプDの事例について紹介します。
業界 | 企業・VTuber名 | 内容 |
医薬品/化粧品 | アンファー株式会社様 ×マイクロVtuber5名 | 自社サイトでの定期購入を促進するための施策を実施。通常の運用広告などではCPA10,000円以上となってしまっていたが、今回の施策ではCPA7,000円を下回る結果に。継続率も通常獲得と同水準となっており、長尺での訴求が可能のため視聴ユーザーの商品理解も深まり、使用前→使用後のギャップも少ない事から継続利用に繋げられている。 |
少なくとも4年以上スカルプDさんのマスカラ愛用してるみみぴです!
— みみぴ👯♀️🖤バニーギャルVTuber (@Mimipi_MMP) May 30, 2024
お仕事できて嬉しい~🥹🫶スクショ残しておこ! pic.twitter.com/wYgKkjg0sA
メリットで上げていた通り、VTuber自身のファンベースを活用し商品のPRも実施していました。元々Vtuberのファンであるユーザーにダイレクトに訴求することが可能で、ターゲットに対してより効果的な訴求が今回のお取り組みでも実現しました。
この記事のまとめ
VTuberマーケティングは、近年大きな盛り上がりを見せているだけでなく、今後もさらに進化し、多様な可能性を秘めたマーケティング手法として期待されています。
今後も技術革新や新たなトレンドによって、VTuberマーケティングはさらに効果的なマーケティング手法として進化していくことが予想されます。企業は、これらの変化をいち早く捉え、VTuberマーケティングの可能性を最大限に活用していくことが重要となります。
VTuberと視聴者、そして企業の関係性がより一層深まることで、VTuberマーケティングは、従来の枠を超えた新たなマーケティングのスタンダードを創造していく可能性を秘めていると言えるでしょう。